鉛色の紙飛行機

ゲームについての感想など。

このブログについて

はじめまして。このブログを見て頂きありがとうございます。

このブログは備忘録と紹介を兼ねたようなもので、印象に残ったものを印象に残っているうちにまとめる事が目的だったりします。

大抵の場合そういう経験は他の人にも紹介したいものなので、日記というよりは紹介記事としてまとめていくつもりです。

記事は自分の為に書いているものでもありますが、誰かがこのブログの記事を見て興味を持ってくれれば幸いです。

内容はおそらくゲームとゲーム音楽サウンドトラック)が中心になると思います。

・更新履歴

2017-08-28 ブログ開設
2017-08-31 「アライアンス・アライブ」の感想を追加。
2017-09-10 「レジェンドオブレガシー」の感想を追加。
2017-10-26 「ダークソウル3」の感想を追加。
2018-01-17 「ロストスフィア」の感想を追加。
2018-12-03 「最悪なる災厄人間に捧ぐ」の感想を追加。
2019-06-02 「神獄塔メアリスケルター2」の感想を追加。
2019-11-05 「サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-」の感想を追加。
2019-12-31 「2019年にプレイしたゲーム(25作品)を振り返る」を追加。
2020-07-13 「西暦2236年 -Universal Edition-」の感想を追加。

『西暦2236年 -Universal Edition-』感想:SFと哲学と理想と現実

タイトル画面

夢と現実が曖昧になった世界。僕は自分自身にこう聞きます。
「過去と未来、どっちが長いの?」
すべての可能性、すべての現実、時間と意識の流れの中で
彼女と僕は、恋愛してしまった。
それは人類の否定 それは思出の棄却

 

まずはネタバレ無しの感想から。

2018年に発売された、全年齢版の『西暦2236年 -Universal Edition-』をプレイしました。
ジャンルの『わたしをフカンするノベルゲーム』の時点でやばい感じは伝わってきていますが、ゲーム紹介の文章はさらに凄いことになっています(冒頭の文章がその一部です)。

テレパシーが当たり前になった近未来、
西暦2233年、実験部でのヒメ・シオンとのやりとりから物語が始まり、
西暦2231年、二人のハル・シオンとの出会いを回想し、
西暦2236年、99件のメールが届きます。

ジャンルとしては未来を舞台としたSF×青春ものに分けられる、と思いますが、もはや甘酸っぱいどころでは済まされず、渋みがメインのような状態です。ヒーローでもなんでもない主人公の苦悩に寄り添い、願いや執着を持つ『私』というものを解剖し、残ったものをじっくりと観察します。
これをエンターテインメントとして純粋に楽しめる人はそうそういないんじゃないですかね。
今回私がプレイしたのは全年齢版ですが、性的描写はまあまああります。それも生々しい方向で。

背景に実際の写真や文字、図形を使ったりするなど演出は凝っており、独自の世界観が作られています。演出的にはエヴァンゲリオンもかなり意識しているとは思います。
とりあえずオープニングをみていただければ。

特に衝撃的なのは、最終盤の展開とエンディングです。
先の展開が分かったときは「もうやめてくれ」と思わずにはいられませんでした。
大人になって色々なものを引きずっているオタクをぶん殴るような作品です。
メッセージ性と引き換えにエンターテイメント性が犠牲になっている部分はありますが、
少なくとも私は、この作品をプレイして全く後悔しませんでした。

セカイ系ボーイミーツガールとSFが好きで、
かつ以下のような哲学的な内容にも興味があればぜひプレイしてほしい作品です。
・論理は経験に先立つのか
・言語と認識
・理想と現実
・原因と結果

こうして並べてみると哲学の多くの話題をカバーしているので、
哲学に触れるきっかけとしてもなかなか良いかもしれません。

 

以下、ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当は意味のあるものなんて一つも無いんです。全ては意味のない文字の並び。」

存在そのものには意味はないが、意味を与える存在であるアリスについての言及から。ウィトゲンシュタイン言語ゲームを思い出したりもしましたが、ソシュール言語学の方が分かりやすいかもしれません。

ソシュール言語学には記号の役割として、「シニフィアン(意味しているもの)」と「シニフィエ(意味づけされているもの)」という考えが出てきますが、シニフィアンシニフィエの間には特別なつながりはないとされています。

つまりは、シニフィアン自体は他と区別さえできれば何でも良いということになります。例えば、「海」という物体を指す言葉は必要ですが、言葉自体は「みう」でも「つみ」でも良かったかもしれません。

なぜ「海」を指す言葉として「海(うみ)」が選ばれたのか、それを決めるものが『アリス』ということなんだと思います。

「ハルはバニラの香りがするけれど、バニラの香りはハルじゃない。」

ここもアリスへの言及が始まった場面ではありますが、記号の無意味さとは少し意味が異なっている気がします。記号というよりは因果についての話で、ヨツバ君の見ている『夢』で例えると以下のような感じになります。
そもそも幸福ってなんだ、という話ではありますが。

①幸福なヨツバはハルと結婚している
原因:ヨツバは幸福である
結果:ヨツバはハルと結婚している

②ハルと結婚しているヨツバは幸福である
原因:ヨツバはハルと結婚している
結果:ヨツバは幸福である

ハルと結ばれる未来をひたすら探していたヨツバ君ですが、実際は「幸福な人は結婚しているかもしれないが、結婚する人が幸福とは限らない」わけで、原因と結果のはき違い(そこに意味を見出してしまう)も、『アリス』によるものということなのでしょう。

「夢、楽しかった?」「恋愛、嬉しかった?」

最終盤のシュウのセリフから。ヨツバが「恋に恋をしていた」ことを自覚し、ハルという人間を見ていなかったことが分かります。
ハルと出会う可能性があるあらゆる世界で、ハルとの関係は破綻しました。先ほどの因果関係でいうと、ヨツバの幸福の中にはハルの姿がなかったわけです。
まあそもそもが心理宇宙(願いが具現化する世界)の記憶を引きずっての結果なので、確かに破綻は免れないのかもしれません。

これらのセリフはプレイヤーにも向けられていると感じます。ノベルゲームで言うところのバッドエンドを繰り返した後のこのセリフは、セカイ系ボーイミーツガールを望んでしまったプレイヤーへ向けられた銃口のようです。

「誰かと結ばれることが幸福の条件とは限らない」については既に知っていましたが、バッドエンドのループ、主人公にとっての運命だった『99件のメール』の削除、ヒロインとの別れを実際に見せられるとなかなかしんどいものがありますね。
確かに『人は忘れる生き物』だと思います。

余談

"いま"の話

ヒメ√のところで「"いま"私の目の前にいるヨツバくんは、ヨツバくん、ただ一人だけなのよ」というセリフがありました。
アカシック図書館で世界に意味がないこと(全ては偶然であったこと)を知った彼らですが、それはすべての可能性を俯瞰できる立場にいたからこそであって、普通は"いま"のこの世界の事しか知りえないわけです。
私としては、可能性を俯瞰できる立場にない限りは、偶然も必然も変わりないように思えます。どちらにせよ、比較対象がないのですから。

「なりたい自分は自分ではないです」

C.S博士のセリフから。

今の時代、情報が氾濫しているせいか、子供でも大人であっても「何者か」になることを強いられているような感覚があります。テレビでは誰かのサクセスストーリーが語られ、書籍では自伝と自己啓発本合いの子のようなものをよく見かけます。
人の認識や記憶はそこまであてになるわけではないですし、物語として再構築する時点でそれらしく「原因と結果」を作り上げているわけで、それらを上手く自らの人生に生かせるかというと、なかなか難しいのではないかと思います。

なりたい自分は今の自分とは違うものである、という当たり前の話ではありますが、
知らずのうちにヨツバ君のように『四角い三角形』を望んでしまっていないかは気をつけたいところです。

次回作

エンディング後に次回作の宣伝がありましたが、つまりは今作での『アリス』が主人公または重要人物ということですかね?
作中でも「壊れ始めた」や「精神病」など不穏な言葉が出ていましたし、なぜ『アリス』が世界を作り直すまでに至ったのかが気になるところです。
余談の更に余談ですが、無意味なはずの『アリス』がナンセンス文学(無意味の文学)という意味を持っているのはなかなか面白い話ですね。

すべてアリスです

 

 

 

 

 

2019年にプレイしたゲーム(25作品)を振り返る

今年プレイした全作品の感想をまとめていたら、こんな時間になってしまいました。
最終的には全25作品になり、1か月に2作品以上のペースで進めていたことになります。
全くもって実感がありません。

色々なゲームをプレイしてきましたが、特にイースシリーズ、『神獄塔メアリスケルター2』、『BLUE REFLECTION』が印象に残っています。
『神獄塔メアリスケルター2』で「イヤホンズ」とプログレッシブロック・ユニットASTURIAS」を知り、『BLUE REFLECTION』で「さよならポニーテール」を知ったりと、音楽の分野でも新しい知識を得るきっかけになりました。

  1. デイグラシアの羅針盤

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    カタリスト(同人サークル)が製作したノベルゲーム。
    2018年12月27日に配信されたSwitch版をプレイしました。
    あらすじとしては「水深700mの海底に沈んだ遊覧潜水艦から脱出する物語」ですが、科学から文学まで、製作者の知識がこれでもか詰め込まれており、SFミステリに収まらない作品となっていました。
    本当に考察のしがいがある作品で、熱に浮かされたような怪文書twitter上に書いてしまうぐらいには熱中しました。
  2. エースコンバット7

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    2019年1月17日に発売された、エースコンバットシリーズの最新作。
    ゲームとしてはマニューバや雲の要素が取り入れられ、シリーズの中ではフライトシミュレーションに寄った作品だと感じています。
    難易度は高めだったもののゲームへの没入感も高く、特にプレイステーションVR使用のミッションは素晴らしいものでした。
    私がこのシリーズのプレイを始めたのは2012年ごろなので、ファンとしてはそこまで古株ではないのですが、 それでも「ACE COMBAT INFINITY」を経ての「7」の登場は感動するものがありました。
  3. rez infinite

    2016年10月13日に発売された、PSVRシューティングゲーム
    エースコンバット7のために購入したPSVRを活用しようと思い購入しました。「Area1」~「Area5」の時点でも、シューティングと音楽、VRで表現された電脳空間が組み合わさった独特なゲーム性を楽しめましたが、 幻想的な空間を縦横無尽に駆け回ることができる「Area X」にすっかり感動してしまい、 クリア後も「Area X」を何度もやり直していました。

  4. 星の欠片の物語、ひとかけら版

    2018年1月18日に自転車操業から発売された、PSVRアドベンチャーゲーム
    記憶を失った「のじゃ」口調の少女と目線でのコミュニケーションを行い、砕けた小惑星を元に戻す、という物語です。
    システムとしては、PSVRの向きで操作する脱出ゲームのようなものです。
    せっかくPSVRがあるのだからと興味本位でプレイしたゲームですが、「PSVRで可能なこと」を突き詰めているという意味で良いゲームでした。
    また、『星の欠片の物語』の本編は2020年春に発売されるようです。

  5. 魔壊神トリリオン

    2015年7月23日にコンパイルハートから発売された、PSvitaRPG
    育成した魔王を死なせながら能力を引き継いでいき、強大な敵(トリリオン)をじわじわと追い詰めていく、というゲームです。その尖ったゲームシステムに惹かれてプレイを始めました。
    魔王(犬を除いてヒロイン)の人物像の描写、トリリオン戦に力を入れた作りで、私としては楽しめましたが、育成システムはもっと凝っても良かったと思います。
    可愛い絵柄と凄惨さが同居したコンパイルハート作品は、神獄塔メアリスケルター、デスアンドリクエストと続いていきますが、この作品がきっかけなのでしょうか。

  6. 神獄塔メアリスケルター2

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    2018年7月12日にPS4版が発売された、神獄塔メアリスケルターの続編。
    「2」という名称がついていますが、リメイク版の「1」が同梱されています。
    感想については別記事でまとめているので詳しくは書きませんが、ナンバリングをまたいだ独特なストーリー、荒削りなものの斬新な戦闘システム、プログレの要素が混じった良質なBGMと、良い要素が沢山あるゲームでした。

  7. ディスティニーコネクト

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    2019年3月14日に日本一ソフトウェアから発売されたRPG
    MOTHERを彷彿とさせるような世界観で、物語自体も心温まるものとなっていました。
    特に「魔壊神トリリオン」「神獄塔メアリスケルター2」を続けてプレイしてのこの作品なので、なおさら物語の優しさに感じ入るものがありました。
    小粒ではありますが、RPGに必要なものが高水準でまとまっている印象を受けます。
    RPGに何を求めているかの指標にもなりますし、値段もこなれているので、ぜひ一度はプレイして欲しいゲームです。
    このゲームも非常にBGMが良いのですが、サントラは発売されそうにないですね…

  8. イース8

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    今となってはPSvitaPS4、Switch、Steamで発売されている、日本ファルコム制作のARPG
    私は2017年5月25日発売のPS4版をプレイしました。
    本当にこのゲームも、ストーリー、アクション、UI、BGMが高水準でまとまっており、ストーリーをある程度知っていたのに関わらず、クリアまで駆け抜けてしまいました。
    絶海の無人島からの脱出という深刻な状況すらも楽しみに変え、「SUNSHINE COASTLINE」や「GENS D'ARMES」のような勢いのあるBGMと共に、 ジャスト回避&ガードでスタイリッシュに立ち回る、そんなゲームです。

  9. イース セルセタの樹海

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    2019年5月16日に「イース セルセタの樹海」のPS4リマスター版として発売されたARPG
    イースシリーズに興味を持ったところでタイミング良く発売されたため購入しました。
    イース8」と比べてしまうと、カメラ操作が不可だったりと、グラフィック面で劣りますが、ジャスト回避&ガードは変わらず存在し、アクションの爽快さは健在でした。
    BGMは「イース セルセタの樹海」のさらに元となる「イース4」から多くが続投しているため、独特な曲調(ズンダラ節?)が多かったのですが、ゲームが盛り上がることには変わりません。

  10. Bloodstained Ritual of the Night

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    2019年6月18日にSteam版が発売された、メトロイドヴァニア型のARPG
    日本語対応のPS4版、Switch版は2019年10月24日に発売されています。
    Hollow Knight」で既にメトロイドヴァニアを経験していたこともあり、悪魔城シリーズ入門のつもりでプレイを始めました。
    城内の仕掛けやBGMは凝っていますし、ゲームとして良くまとまっていると思うのですが、シリーズ未経験者が始めるには難易度が高かったと感じています。
    クリア後、プレイ動画を見てスキルを利用した立ち回りに関心したことが記憶に残っています。

  11. イース7

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    元は2009年9月17日にPSP向けに発売されたRPG
    2017年に発売された60fps&HD化のsteam版をプレイしました。
    イース セルセタの樹海」より前の作品のためジャストガードのみ可能なのですが、アクションゲームとしてはこちらの方が好みです。
    難易度normalであってもボスが強いのですが決して理不尽というわけではなく、スピーディーかつ硬派なアクションゲームという印象です。
    また、BGMの勢いの良さも健在で、「MOTHER EARTH ALTAGO」を最初に聴いた時はテンションが上がりました。

  12. イース1&2 クロニクルズ

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    2009年12月24日年発売のWindows版をプレイしました。
    辿るとPC-9801で1987~1988年に発売された、「イースⅠ」「イースⅡ」のリメイクにあたるので、元は非常に古いゲームです。
    ゲームとしては半キャラずらししつつ体当たりor魔法で攻撃のシンプルなものですが、これがやってみると非常に難しく、難易度NORMALでのクリアをあきらめてしまいました。
    他にも「イースⅡ」のサルモン神殿のマップが難解だったりと、古いゲームらしさを感じさせるものはあったのですが、 不思議と楽しんでプレイすることができました。
    フィーナやリリアといった登場人物や古代さんの楽曲を知ることができ、イースシリーズを理解する意味でも収穫がありました。

  13. イース6 ナピシュテムの匣

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    2015年4月29日に発売されたsteam版をプレイしました。
    1や2とも、7以降とも違い、3D上でアドル単体を操作し、スキルの付け替えもないシステムです。
    とはいえ魔法のようなものがないわけではなく、青、赤、黄のエメラス剣に対応したスキルが存在します。
    また、エメラス剣ごとにアドルのモーションも変化するため、アクションに飽きることもありませんでした。
    レベル差の補正が強く、本編中の大半をレベル上げで過ごしたような感じでしたが、有翼人の設定(後付けではありますが)や、7に登場するガッシュの背景が分かったこともあり、おおむね楽しむことができました。
    PC向けであるためか、グラフィックはイース7より綺麗だと思います。

  14. イース フェルガナの誓い

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    こちらは2010年4月22日に発売されたPSP版をプレイしました。
    steam版でも問題はなかったのですが、イベント時のボイス追加や200%オーバードライブの追加があり、難易度のバランスも取れているという評判のPSP版を選びました。
    イース6」での問題点も解消されており、ストーリーの出来も良いため、このシステムのイースの中では今作が一番面白いと思っています。
    戦闘も勝てそうでギリギリ勝てない絶妙の調整がされています。
    ただ、normalでもボスごとに十数回はGameOverするような難易度なので、ダークソウルあたりのフロムゲー経験者の方が楽しめるかもしれません。
    BGMは本当に良曲揃いで、特に後半の「バレスタイン城」、「時の封印」、「Chop!!」、「最強の敵」のラッシュは非常に盛り上がります。

  15. イース オリジン

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    2017年2月21日に発売されたPS4/PSVita版をプレイしました。
    システム面では「イース フェルガナの誓い」を踏襲し、主人公はアドルではなく、ユニカ=トバとユーゴ=ファクトとなっています。
    舞台はイース1、2の700年前であり、イースシリーズにおける外伝のような立ち位置です。
    システム的には面白いのですが、ダームの塔内部で物語が完結してしまうため、どうにも閉塞感がありました。
    ユーゴ=ファクトと隠しキャラ分のストーリーは未プレイの状態です。

  16. ファイアーエムブレム 風花雪月

    2019年7月26日に任天堂から発売されたSRPG
    元々購入予定にはないゲームでしたが、twitter上で話題になっていたこともあって購入。
    実際にプレイしてみると、あらゆる方面での作りこみが凄まじいゲームでした。
    舞台となるガルグ=マク大修道院NPC、矛盾を起こさない生徒たちの支援会話、育成システム、全4ルート存在する膨大な物語、実際の歴史をもとにしたと思われる世界背景と、手を抜いた箇所が一切ないような状態で、こんなゲームはそうそう出てこないんじゃないかというのが率直な感想です。
    ゲームの密度が高すぎて疲れる、というなかなか無い経験をしました。
    私は帝国ルートのみクリアした状態ですが、全ルートを制覇すると200時間以上は掛かるんじゃないでしょうか。

  17. 鬼ノ哭ク邦

    2019年8月22日にスクウェア・エニックスから発売されたARPG
    東京RPGファクトリーが手掛ける3つ目の作品となります。
    独特な死生観を持った国を舞台とし、人を迷いなくあの世へ送り届ける役割を持つ「逝ク人守リ」の一員であるカガチが主人公の作品です。
    前2作である「いけにえと雪のセツナ」「ロストスフィア」がコマンド型RPGだったため、ARPGは今作が初となるのですが、それでも東京RPGファクトリーらしさは良く表れています。
    通常状態では技の硬直を回避でキャンセルさせなかったり、そもそもダッシュやジャンプを武器(鬼ビ人)固有のものにしたりと、必要なものの取捨選択と工夫をプレイヤーに求めてきます。
    そもそも考えるプレイヤーだけを相手にした攻めたゲームに思えるので、前2作と同様、人を選ぶゲームではないでしょうか。
    私としては、まずゲームの物語としての回答に納得していないため、評価しづらい作品です。

  18. GRIS

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    2018年12月13日にNomada Studioから発売された、アクションパズルゲーム
    水彩画のようなグラフィックに惹かれてプレイしました。
    失った色を取り戻すごとに世界が色鮮やかになってゆく様は非常に綺麗でした。
    ゲームとして面白いかどうかはさておき、BGMとグラフィックが作り出す世界観は独特です。

  19. モンスターハンターワールド:アイスボーン

    2019年9月6日配信の大型DLC
    特にこれまでのモンスターハンターシリーズとやることは変わらないのですが、やはり新天地での探索は面白いです。環境生物集めも個人的には好きです。
    ただ、マスターランクと導きの地のシステムはどうかなと思っています(調整はされましたが)。
    片手剣のクラッチアッパーとジャストラッシュに強化が入ったのでプレイしたいと思いつつも、どうも食指が動かない状態です。

  20. イース9 モンストルム・ノクス

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    2019年9月26日に発売されたイースシリーズ最新作。
    イース8」とはシステムや舞台が変わり、要塞都市での探索が中心となりました。
    8があまりにも爽快だったのでどうなるかと思いましたが、ストーリーも含めて別の方向性で綺麗にまとまっていた印象です。
    異能アクションで街中を駆け巡る感覚はこれまでのイースシリーズにないものでしたし、ミステリ仕立てのようなストーリーも楽しむことができました。
    7からの傾向ですが、もっとも人物描写に力が入っている作品だとも思います。
    BGMに関しては、世界観に合わせてノリの良さ、開放感は抑えめですが、「GLESSING WAY!」のような従来に近い曲も収録されています。
    全体的に、何度も聴くと癖になるようなスルメ曲が多い印象です。
    個人的には「MARIONETTE, MARIONETTE」、「CATCH ME IF YOU CAN」、「STRATEGIC ZONE」あたりも一風変わっていて好みです。

  21. ライザのアトリエ 常闇の女王と秘密の隠れ家

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    同じく2019年9月26日にコーエーテクモゲームスから発売されたアトリエシリーズ最新作。
    フリーになったアサノハヤトさんが戦闘曲を手掛けていることがきっかけで購入しました。
    発売前に主人公ライザのデザイン絡みでネット上で色々ありましたが、中身は少年少女の成長譚(ジュブナイル)で、ストーリーの出来はむしろ良いのではないでしょうか。
    特にエンディングは寂寥感を良く表現できていると思います。
    錬金システムもそこまで複雑ではなく(凝ろうと思えば凝れる)、アイテムの個数管理もコアクリスタル(CC)の消費量に取って変わられたため、 ソフィーのアトリエ以上に初心者でも楽しめる作りになっている印象でした。
    ただ、FFで言うATBに近いシステムになった戦闘に関しては、慣れないうちは画面いっぱいに表示される情報に翻弄されるんじゃないかと思います。
    逆に、慣れてしまえばむしろ面白くなってきます。
    BGMに関しては、これまでの楽曲とは違い、民族楽器を一切使っていません。
    管弦楽団(オーケストラ)を編成して収録したもののため、非常に聴きごたえがあります。

  22. サクラノ詩 櫻の森の上を舞う

    2015年10月23日に枕から発売された18禁のノベルゲーム。
    哲学的な意味での関連作品である「素晴らしき日々 ~不連続存在~」をプレイしていたので、いつかはプレイしなければならないと思っていたゲームです。
    哲学や思想という点で多くを学べたゲームですが、エロゲーとしてどうなのかは良く分かりません。
    この作品もBGMが凝っており、特にそれぞれのED曲は良曲揃いです。

  23. デス・ストランディング

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    2019年11月8日に発売された、コジマプロダクションが手掛けた運び屋アクションゲーム。
    正体不明の災害「デス・ストランディング」に見舞われたアメリカで、ポーター「サム」として、孤立した人々に荷物を届けるゲームです。
    爽快さとは遠いところにあるゲームなのですが、安全な道を選択し、必要な物資を揃え、場合には敵対者を排除しつつ進んだりと、 じわじわと面白さが伝わってくる作品でした。
    またストーリーに関しても、冒頭が安部公房の『縄』の引用から始まり、ヨハン・ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』の概念や、古代エジプトの死生観を落とし込んでいるため、考察の余地があるものになっていました。

  24. ブルーリフレクション 幻に舞う少女の剣

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    2017年3月30日にコーエーテクモゲームスから発売された、PS4/PSvita向けのRPG
    浅野隼人さんが全曲を手掛けたRPGであることは知っていたので、プレイする気はあったのですが、なかなか手を出せずにいました。
    実際にプレイしてみると、ストーリー、システム、BGM共に楽しめる作品でした。
    「感情」を中心に置いたストーリーは整合性という観点で見れば甘いのかもしれませんが、題材は誰にとっても理解できるものですし、最終的な結末への伏線も作中に用意されています。
    日菜子達が変身するリフレクター、最上位のダンサーを指すエトワール、更紗との会話で出てくる古典バレエなど、ストーリーを終えると気付くものがあります。
    戦闘も難易度HARDで進めていき、場合によってレベルを上げすぎないよう気を付ければ、決して単純でないシステムをフル活用した戦闘が出来るようになります。
    作品の雰囲気に関しても、光の表現にこだわった透明感のあるグラフィックと、
    浅野さんのピアノと電子音を中心とした楽曲が上手く表現出来ていると思います。
    ただ、「魔法少女」と「女子高生」が強調されているのは確かなので、人を選ぶ作品ではあります。
    2020年1月3日までsteam版が60%OFFなので興味があればぜひ。

  25. グラビティデイズ

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    2015年12月10日に発売されたPS4版をプレイしました。
    BGMの良さがきっかけでプレイを始めたわけですが、独特な操作にはまってしまい、一気にクリアまで進めてしまいました。
    ゲームとしてのアイデアがUIやシステムの不便さを上回った、という印象です。
    コミック仕立てのストーリーは独特でしたが、ストーリー自体は可もなく不可もない出来だと思います。

『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』を終えて※ネタバレ有り

1月から少しずつ進めていた『サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』をTRUE ENDまで見届けました。
※ネタバレしかないのでご注意ください。

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前置きとして、
この記事が書かれた経緯をほんの少しの作品紹介も兼ねて説明します。
(そもそも知っている人しかこんな記事は見ないでしょうが。)

サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』は、
2015年に枕から発売されたアダルトノベルゲームです。
2010年の『素晴らしき日々 ~不連続存在~』の流れを汲む作品であったほか、
そもそも2004年発売予定だったものが2015年に発売されたという事情もあり、
多くの期待が寄せられた作品だったようです。
私が素晴らしき日々をプレイしたのは2016年のことでしたが、
確かにサクラノ詩が当時話題になっていた記憶があります。

そういった背景から既に数多くの感想・考察記事が存在していますし、
作品に込められたテーマも「幸福の先への物語」という非常に哲学的なものでしたから、
中には3万字以上にも及ぶような感想記事を書き上げた方もいます。

こんな状況だと「わざわざ記事を作らなくても良いかな?」という気もしてきますが、
続編の『サクラノ刻 -櫻の森の下を歩む-』の完成が近づいていることもありますし、
プレイ後の疑問や感想をいつでも振り返ることができるようにまとめておきます。

何章が何の話だったのか分からなくなりそうだったので、感想は章ごとに区切りました。

・序 O wende, wende Deinen Lauf Im Tale Blüht der Frühling auf!

宮沢賢治の『春と修羅』の引用と、草薙健一郎の葬儀から始まる序章。
プレイ当初は遺産相続のくだりに裏を感じつつもただの導入としか思っていませんでしたが、
Ⅴ章を終えてもう一度見直すと、何気ない日常の価値やⅤ章の稟の心情など、新たに見えてくるものがあります。

調べるまで全く分かりませんでしたが、題はアドルフ・ベドガーの詩からの引用でした。
詩の意味としても、春の始まりを告げるもののようです。
この詩を元にシューマンが書き上げた曲が交響曲第1番『春』であり、
その『春』の第一楽章、第二楽章の名もそのままⅠ章Ⅱ章の題として使われています。
言われてみれば、確かにBGMにも「シューマン交響曲第一番的日常」という曲がありました。
私はクラシックにはてんで詳しくないので、聴いても元の曲に似ているのかどうかすら分からないのですが。

・Ⅰ Frühlingsbeginn

中原中也の『春日狂想』の引用から始まる章。
位置づけとしては、弓張学園美術部のメンバー紹介といったところでしょうか。
氷川里奈はともかく、川内野優美とトーマスは下ネタ方向に特化していたので、
日常会話(と言ってよいのか?)が個人的にはかなり苦痛でした。
確かにサクラノ詩はアダルトゲームですが、その辺りの会話を無理に入れる必要もなかったと感じます。

この章では稟がオスカー・ワイルドの『幸福の王子』を読む場面が印象に残っています。
Ⅴ章で王子が直哉、ツバメが圭であることに対してのセリフだったわけですが、この時点ではまず繋がりませんでしたね。

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・Ⅱ Abend

美術部全員の力で草薙健一郎の遺産、「櫻達の足跡」を完成させる章。
この章までなんだかよく分からないやつだった明石亘が急に格好良くなりました。
明石は才能でこそ直哉に劣っていましたが、芸術家としての信念では負けていませんでした。

「我々が何のために作品を作るのか……それさえ見失わなければ問題ない……。
 そこに刻まれる名が、自分の名前では無いとしてもだ……」

特に上のセリフは「櫻達の足跡」と共にⅥ章まで持ち越されていますし、サクラノ詩にとって重要な人物だったのだと思います。
今のところはサクラノ刻に登場するかが不明ですが、出来ればⅥ章後の直哉と語り合ってほしいところです。
なのに大学卒業後にやっていることがあれって…

・Ⅲ Olympia

御桜稟ルート。
稟の記憶を取り戻すために奔走する章。
廃ビルでの救出劇のように盛り上がる箇所もありますし、
草薙直哉の右腕の事故という出来事についても語られるのですが、
他の章と比べると登場人物の描かれ方が一面的なせいか、
あまりぱっとしない章だったように思えます。
御桜稟も長山香奈も、他章で重要な役回りを果たす登場人物だったためにそう感じてしまうのでしょうか。
エンディング曲の「Bright pain」も他のED曲と違ってジャンル的にはトランスですし、
あえて他の章と差をつけているのかもしれません。
あと立ち絵の稟の頭が大きくて見ていて不安になる。

・Ⅲ PicaPica

鳥谷真琴ルート。
愛と夢についての物語ですが、母と娘と姉弟の物語でもあります。
恋愛を描いた物語としてはこの章が最も読みやすくまとまっていたと思います。
後の「ZYPRESSEN」もとても魅力的な物語ではありましたが、
あちらは詩的な表現や伝奇要素など色々と特殊なので同じ土俵で語ることは難しいです。
ここで、中村家と鳥谷家の因縁、直哉と圭という芸術家の在り方、そして愛について語られますが、
思い返してみればサクラノ詩という作品全体に対しての伏線になっていますね。

「愛と、その他の全ては等価値なのかしら。天秤は釣り合っている?」
「俺と真琴の間には、愛以外はないのだ。
 他の深い絆も、傷も、過去も、何一つない。」

この章でモチーフとして度々登場する「かささぎ」ですが、学名が「PicaPica」だったと知って驚きました。「gorilla gorilla gorilla」のような理由なんでしょうか。
クロード・モネの「かささぎ」も良い絵でしたし、機会があれば見に行ってみたいですね。

・Ⅲ ZYPRESSEN

氷川里奈・川内野優美ルート。
全体で4つあるⅢ章の中では、この章が最も好みでした。
ゴッホの『糸杉』、宮沢賢治の『よだかの星』、中原中也の『春日狂想』と要素がこれでもかと詰め込まれていただけではなく、詩的な表現と独白、そして兎桐茸子さんの絵が合わさり、おどろおどろしさと美しさが両立した章となっていました。
加えて優美を通してレズビアンというセクシャルマイノリティの内面を描きつつ、
次章への橋渡しとなる伯奇伝承まで入れ込んだ上でここまで綺麗な結末に仕上げたわけですから、この章そのものが「綺麗なものは綺麗なものから出来ているとは限らない」を体現しているような気がします。
この「Ⅲ ZYPRESSEN」は優美の恋が成就する「marchen」へも分岐しますし、
語りつくせないほどの要素が散りばめられているとは思うのですが、やはり1週しただけでは読み切れません。

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元々この記事ではあまり画像を使わないつもりでしたが、兎桐茸子さんの絵が独特なのでここだけ。

・Ⅲ A Nice Derangement of Epitaphs

夏目雫ルート、ではありますが美味しいところはほぼ親父に持っていかれた気がします。
他のⅢ章である「Olympia」「PicaPica」「ZYPRESSEN」の伏線を回収する物語であったためか、雫という人物に対する掘り下げというよりは、稟、吹、草薙健一郎、フリードマンといった周辺人物にスポットが当たっていました。
直哉が『櫻七相図』を描き上げた後の健一郎とのやり取りは熱すぎましたし(文字の演出も含めて)、フリードマンと世界のワタール・アッカシも良い役回りをしていました。
彼らに対して、雫が果たした役割といえば、ヒーローに守られるヒロインでしかありませんでした。
もっとも、雫本人もそのことはかなり気にしているようでしたが。
恩を返すために女優業でお金を稼ぐ、となると急に物語が生々しくなりますね。

一つ疑問だったのは、中村家がやけにあっさりと「伯奇神楽鈴」を手放したことでした。
法に触れる行為を繰り返してまで血の濃さを保ち、伯奇を生み出すことに執着していたのに、です。
それほど金銭的に困窮した状況だったのでしょうか。

・Ⅳ What is mind? No matter. What is matter? Never mind.

草薙健一郎と中村水菜の馴れ初め。
夏目家と中村家の抗争、そして夏目屋敷に飾られている「オランピア」の理由がここで明らかになりました。
章の題にもなっているように、心と体についての会話が終盤に用意されていますが、
個人的に物語に絡ませるには少し無理があったように感じてしまいました。
物語としてはそこまで尺を取る必要があったかどうか分かりませんが、
心と体の関係は西洋哲学でも古くから議論されていたものですし、気になる話題ではあります。

そして、健一郎の独白で最も印象に残り、疑問でもあったのが以下のセリフです。

「人生にifなど無意味だし、そもそも、それはクソすぎる選択だ。」
「人生にifなど必要なく、
 だからこそ、俺はあの娘とあの場所であの季節に、必然的に出会ったのだ。」

サクラノ詩というゲームの構造として、
全てのⅢ章をプレイした後でなければⅣ章に進むことはできません。
つまり4つのⅢ章というifを経験したプレイヤーに対してこのセリフが突き付けられる訳ですが、
何を目的として用意されたセリフなのかがプレイ後の今でもよく分かっていません。
Ⅴ章が本当の終わりへと繋がる章であることを強調したかった?
あるいは以前プレイした『デイグラシアの羅針盤』のように、選択肢という考えの無意味さを説きたかったのでしょうか?※1

・Ⅴ The Happy Prince and Other Tales

王子の直哉と、ツバメの圭のお話。
時系列としてはⅢ章と同時期にあたり、圭のためにもう一度筆を取った直哉が「蝶を夢む」を描き上げます。
直哉の「蝶を夢む」は圭の「向日葵」とともにムーア展にノミネートされますが、
授与式当日、圭は直哉の絵を見届けることなく交通事故で亡くなってしまいます。

この章で違和感を覚えた箇所は、直哉が自らの夢である「圭と共に世界的な芸術家になること」を唐突に語りだし、これまでの滅私奉公の行いが本当に正しいものであったかどうか問う場面です。

4つのⅢ章では、直哉が自らの夢を語ることはなかったと記憶しています。
Ⅴ章の状況としては「PicaPica」が近いはずですが、
それでも直哉は真琴のためだけに絵を描きました。
ある意味、直哉が夢を思い出すこと、そして圭と絵を競うことを徹底的に避けているようにも感じられます。
直哉は真琴だけを愛していたために圭に絵を描かなかった、という解釈もできますが、
この未来を既に知っているかのような直哉の行動について理由をこじつけると、
それぞれのⅢ章「Olympia」、「PicaPica」、「ZYPRESSEN」、「Nice Derangement of Epitaphs」が直哉がⅤ章で見た夢だった、という結論も出てくるんですよね。
ちなみに、これならばⅣ章でのifの否定とも繋がりますし、
度々作中に登場する回文「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな」とも繋がります。
実際どうなのかは作者の頭の中ですが、もしこんな仕掛けがあったら面白いなとは思います。

また、ここで自らの行いを否定する「ああ、俺が間違っていた」を選択すると、
Ⅵ章へ進むことなく、藍ルートに分岐してエンディング曲が流れることもなく終了します。
夢を失って愛(藍?)を得るという結末ですが、「PicaPica」での真琴と同じ結末を辿っているんですよね。
夢と愛はトレードオフの関係にある、というのもサクラノ詩の主題の一つかもしれません。

あとは、Ⅴ章終盤の稟と直哉の会話はやはり印象に残りました。
強き神は人を裁く絶対的なもの、弱き神は人と寄り添う相対的なものということなのでしょうが、
この対比がサクラノ刻でどう生かされるのかが楽しみです。
以下はⅥ章での直哉のセリフです。

「人が美と向き合った時、
 あるいは感動した時、
 あるいは決意した時、
 そしてあるいは愛した時、
 その弱き神は人のそばにある。
 人と共にある神は弱い神だが、
 それでも、人が信じた時にそばにいる。」

少し話がそれますが、フリードマンの「Damn it!」はかなり心に刺さりました。
口では金のためと言いつつも決してそれだけではない登場人物は、どの作品でも活躍しますね。

・Ⅵ 櫻の森の下を歩む

この章は、サクラノ詩のテーマである「幸福の先への物語」を描いた章だと思います。

「すべての最高には、最悪がべっとりとはりついている
 最高は最悪で、最悪は最高なんだ……」

「ああ、他人からみたらクソみたいな人生で
 クソみたいにどうでもいい時
 たぶん、俺たちは一番生きているんだよ
 楽しんでいるんだよ」

「幸福だって、酒と同じ、度合いがすぎれば、吐き気がする。
 そんなクソッたれなもんが、幸福なんてもんなのに……なのに
 人は幸福を望む」

『櫻達の足跡』に起きた事件を通して、学生時代の輝きを思い出した後半の直哉のセリフからですが、
不幸の裏返しとしての幸福と、行き過ぎた幸福について語られています。

そもそも不幸がなければ幸福が区別できないことのは分かるのですが、
もう一つは幸福を絶対的なものにしようとして度を過ぎてしまう、ということですかね?
つまり「あの頃は良かった」と思える過去がある時点で、ある意味幸せなのかもしれません(本当に?)。

次のセリフは、弓張学園の非常勤講師だった若田先生のものですが、
妙な懐かしさを感じました。
少し前まではこの手の話題を良く聞いていたはずなのに、
いつからかさっぱり聞かなくなったなと。

「特別な日。幸福な日。幸福な瞬間……まるでそれは、
 いつまで経っても開けられない秘蔵の酒みたいに、捕まえることが難しい。」

記事をまとめていて気づきましたが、
「櫻の森の下を歩む」はサクラノ刻の副題でもありました。
確かに弓張学園美術部を復活させる咲崎桜子、栗山奈津子、氷川ルリヲ、
川内野鈴菜、柊ノノ未、恩田寧(名前出てないけど)は登場していますし、
サクラノ刻の序章の役割も果たしていそうです。
この状態で5年も待たされたファンはかなり辛かったと思います。

最後に、
Ⅴ章から考えるに稟が圭の役割(直哉を世界に連れ出す)を引き継いでそうですが、
Ⅵ章でのフリードマンとの会話からしても直哉は弓張から動く気がなさそうなんですよね。
むしろ稟がいつか弓張に戻ってくることを信じている。

そしてサクラノ刻ファーストファンブックの「二人の天才が生み出す因果交流の光の物語である」についてですが、これは本当に稟のことなんでしょうか。どうも稟以外の誰かなのではという気もしてきました。

年内にはサクラノ刻の体験版が出てくると嬉しいのですが、
すかぢさんのTwitterを見る限り必ずどうやっても出すそうなので、ゆっくり待ちます。

あと生徒Cこと片貝さんには期待したいですね。
Ⅵ章での、飲み屋で直哉と雑談を続けているシーンは非常に気に入っています。
では、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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※1 選択肢があったかどうかは過去を振り返った時にしか分からない。今が変わることは決してないのだから考えること自体が無意味、という話。

神獄塔メアリスケルター2の感想と紹介:独特なシステムと物語展開を持つ長編3DダンジョンRPG

今回は2018年7月12日にコンパイルハートから発売されたDRPG、
『神獄塔 メアリスケルター2』について紹介します。

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このゲームは前作にあたる『神獄塔 メアリスケルター』のリメイク版も同梱されており、ストーリー上も大きな関わりがあります。そのため、この記事では『神獄塔 メアリスケルター2』、リメイク版『神獄塔 メアリスケルター』(以降、メアリスケルター1)の両作品を取り扱います。

プレイ前は心配な部分もありましたが、結果としては良い作品でした。
ストーリーは伏線を含めて良く練られており、戦闘面も荒削りでありながらも色々なものを試す楽しみがありましたし、BGMは物語を良く演出していました。
特に『神獄塔 メアリスケルター2』からリメイク版『神獄塔 メアリスケルター』への橋渡しは秀逸だと思います。
人を選ぶ要素はありますが、世界観から細かいシステム面まで考えながらゲームをプレイする人には受けるのではないでしょうか。

舞台は現代日本、「ジェイル」という生物に寄生されたことで陥没し、周囲からも断絶した都市から物語は始まります。
この「ジェイル」の管理から抜け出し、地上へ脱出すること。
それがメアリスケルター1、2の物語の共通点となります。

世界観は良く作りこまれており、作中に疑問を持つような出来事があったとしても、しっかりと理由付けがされています。※1
序盤から伏線は張られており、それらの伏線は終盤に残さず回収されるため、物語としてよく出来ていると思います。

そもそも「ジェイル」という生き物とは何なのか、
「ジェイル」の外の世界は今どうなっているのか、
そして、常人離れした身体能力を持ち、童話の主人公と同じ名を持った「血式少女」はどうして存在するのか。
これらに限らず作中の謎は数多く存在し、物語においては「謎」が大きな推進力となっています。
公式サイトの「獄中童話前日譚」、「獄中童話幻日譚」をあえて読まずにプレイしてみるのも、一味違った面白さがあるかもしれません。

物語の順序としては、「メアリスケルター2」の次が「メアリスケルター1」となっており、物語として重点的に描かれる部分も1と2では異なっています。
「メアリスケルター2」では主に登場人物同士の会話を通じて内面を描き、
「メアリスケルター1」では主に世界の謎を解き明かしていきます。

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特に「メアリスケルター2」は「メアリスケルター1」を前提にした物語であるため、1では描かれなかった、あるいは描く必要のなかった、登場人物達の喜びから苦しみまでが全面に押し出されています。

2から1をプレイすることを考えれば登場人物の掘り下げは大きな意味を持ちますが、やはり「メアリスケルター2」単体としてみた場合は、コメディもあるものの物語は全体的に暗め、という評価になります。
また、謎が気になってストーリーを進めている人にとっては、中だるみと感じても仕方ないと思います。

その分、リメイク版「メアリスケルター1」は謎が解き明かされる高揚感と未来への希望を感じるストーリーとなっているので、『リメイク版「メアリスケルター1」まで含めての「メアリスケルター2」』、と思って遊んでみて欲しいというのが個人的な願いです。
確かに両作品を合わせると相当の分量になりますが、続編と前作のリメイクががこのような関係になっているゲームはそうそう無いので、どうか諦めずにプレイして欲しいです。

ちなみに、それぞれの主人公は、メアリスケルター2が女性主人公(つう)、メアリスケルター1は男性主人公(ジャック)であるため、会話イベントの毛色はだいぶ違っています。

次に、あまり他では触れられていないシステム面の感想に移ります。
穢れの管理、ジェイルボーナス(ルーレット)という斬新なシステムから、
バフ、デバフ、状態異常、職業変更等の基本的なシステムまで揃っているので、
戦闘は十分に楽しむことができました。

個人的には、穢れの管理とジェイルボーナスは戦闘をかなり面白くしていたと思っています。

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それぞれのキャラごとに血を浴びた量を表すゲージがあり、
このゲージが満たされると、ジェノサイドモードという強化状態になります。
ゲージが満たされる量は、弱点属性による攻撃、クリティカル攻撃、オーバーキルなどの条件で変動します。

ですが、このゲージには穢れという概念があり、大ダメージや時間経過で色が黒ずんでいきます。そして、穢れの度合いによってブラッドスケルター(つまりは暴走状態)になる確率が上がっていきます。

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場合によっては、そのまま全滅するため、ジャックの血を使って穢れを消す、または「舐める」コマンドでゲージを0にする等の対策が必要になります。

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ジェノサイドモード時にでしか利用できないスキルもあれば、「舐める」コマンドでのみ発動するスキル(魂血スキル)もあるため、ジェノサイドモードと魂血スキルのどちらを取るかは戦略によります。

次に、画面右上の3つのゲ―ジのどれかが満たされると、ジェイルボーナス(ルーレット)が始まります。
3つのゲ―ジというと何だか複雑ですが、とりあえず敵を出血させて、「舐める」コマンドを使用すればゲージは満たされていきます。

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発動条件が厳しい分、ジェイルボーナスの効果には強力なものが揃っており、
強力なバフ、デバフ、全体完全回復や耐性無視の状態異常などのボーナスを受けることができます。
また、それぞれの出現確率に関しては、ジェイルピースと呼ばれるアイテムを使って調節することが可能ですし、職業別スキルでジェイルボーナスを強化することも可能です。
ジェイルボーナスのバフとデバフが強力である引き換えに、通常のバフデバフの性能は抑え気味になっています。

ここまでは良かった面だけを紹介しましたが、調整が不安定な箇所があったことも確かです。
2の旧水族館エリア、リメイク版1の旧寺院エリアなど部分部分で敵の強さが極端になる箇所はありましたし、
後述する、2で独自に追加されたシステムに関しても、好みで言えばもう少しシンプルでも良かったと感じています。

メアリスケルター2にのみ存在するシステムについて、全てではありませんがいくつか紹介します。

・職業のパッシブスキルの引継ぎ
職業ごとに習得できるスキルのうち、パッシブスキルも引き継ぎが可能になっています。
そのため、AGIが低ければ最速行動のパッシブスキルで補ったりと、短所を埋め、長所を伸ばすことが可能です。
パッシブには有用なものが多いため、誰にどのスキルを引き継がせるか頭を悩ませる楽しみがありました。

・ブラッドファーム
「血晶」というアイテムをダンジョンに埋め、装備を栽培して収穫する農場です。
ランダムではありますが、補正値(+99まで)、付加効果付きの装備を手に入れることができます。
便利なシステムではあったのですが、その分、通常の武器強化のシステム(+20まで)が割を食っていたとも思います。

・装備の付加効果

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装備ごとに以下のような効果が追加されます。

鋭利属性→出血量の増加
殴打属性→クリティカル率上昇
血走属性→かごめかごめ発生率
装備スキル→後述

もちろん、どの装備にどの効果が付くのかはランダムなので、基本性能を取るか、付加効果を取るかで判断を迫られます。
アイコンの詳細な意味と効果の度合いが分からなかっため、それぞれの効果が具体的に可視化されていれば良かったと感じます。

・かごめかごめ
血走属性が付いた装備品を装備している状態で敵を攻撃すると、
まれに敵が後ろ向きになり、防御力が格段に下がります。
出来れば上手く利用したかったのですが、
発動には複雑な条件が絡んでいるようで、ほぼ発動せずにクリアしてしまいました。

・ユ血スキル

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特定のアイテムを使用し、消費SP0のスキルを習得することができます。
効果は補正値によって上昇していきます。
発売当初はかなり強力なスキルだったようですが、現在(2019/6/2)はかなり効果が抑えられており、そもそも補正値の強化も運任せであったため、あまり出番がありませんでした。
とはいえ、HP回復やSP回復のユ血スキルに関しては、回復効果強化のスキルや装備と組み合わせるとなかなかの効果を発揮します。

・装備スキル

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基本的には補正値のない、装備限定のユ血スキルのようなものです。
ユ血スキルと同様、ほぼ出番がありませんでしたが、消費なしの全体攻撃である「オールアタック」だけは恐ろしく使い勝手が良かったため、終盤まで使い続けていました。

・魔法の詠唱
全体攻撃や全体回復、また強力なスキルを使用する際には、詠唱として待ち時間が発生し、その間に攻撃を受けると確率で詠唱が中断されてしまいます。
結果として、全体魔法で先手を打つことが難しくなっています。
そのため、横一列魔法攻撃の「ブラッディマニューバ」や「SP・ファイアドレイン」の方が被弾を抑えるという意味では重宝しました。

上記のシステムはリメイク版のメアリスケルター1には引き継がれておらず、
同じDRPGでありながらもプレイした感覚には差がありました。
装備は、敵からのドロップ、マップ上のトレジャー、店売りで揃えることになりますし、通常の武器強化のシステム(血式兵器製造所)も上手く機能していました。
もちろん魔法の詠唱も無くなっていますが、その分行動を2回分消費するという仕組みに置き換わっています。

個人的には、リメイク版メアリスケルター1の方がなにかとシンプルで好みでした。
メアリスケルター2クリア後、立て続けにリメイク版メアリスケルター1をプレイできたのは、このあたりの理由が大きく関わっていたのではないかと思います。

DRPGとしてのダンジョン探索に目を向けると、アクション性のあるギミックが特徴的です。
時間で針が飛び出す床、綱渡り、時間制限ありの扉など、ダンジョン探索RPGとしては珍しいギミックが揃っています。

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そして、ひときわ特徴的なのが、強大な敵であるナイトメアとの「鬼ごっこ」です。
特定の条件を満たすまでは撃破不可であるため、とにかく追跡から逃れる必要があります。
追い詰められた場合は戦闘が開始され、敵が一時的に戦闘不能になるまでダメージを与え続けなければなりません。ターンではなく時間で追いかけてくるため、非常にスリルがあり楽しめました。※2
また、ナイトメアだけは時間で行動順が繰り上がる仕組みになっており、FFシリーズのATB同様に、素早いコマンド入力が求められます。※3

BGMの良さもこのゲームの魅力の一つです。
作曲は、ニトロプラス作品や、コンパイルハートの他のDRPGの楽曲を担当していたZIZZ STUDIOです。
1ループは短めなものの全体的に曲が凝っており、やはり主旋律をバイオリンで統一した戦闘曲が特徴的です。
特にメアリスケルター2に至っては戦闘曲が9曲もあり、相当のこだわりを感じられます。
以下、いくつか楽曲紹介。

メアリスケルター1
・「Soldier of the Wind」
 最初の通常戦闘曲。
 サビにあたる部分の疾走感が特徴で、このフレーズは2のとあるBGMにも使われている。
・「Skelter」
 戦闘曲ではなく、逆転が始まるシーンで良く使われるBGM。こちらも主旋律はバイオリン。
 1曲の長さが3分36秒もあり、長い会話の裏でも大抵はループせずに流れ続ける。
 作曲者の大山曜が主宰しているElectric Asturiasの3rdアルバム「Trinity」にセルフアレンジが収録されている。
・「精神の自由」
 解放地区(拠点)のBGM。
 こちらは曲の始まりのピアノが特徴的で、解放地区の平穏さと儚さが良く表現できていると感じる。

メアリスケルター2
・「Purple Flight」
 2の最初の通常戦闘曲。
 良い曲だが、個人的には水族館のザザスターの印象が残りすぎている。
・「美しき戦士たち」
 バイオリンの多重録音が特徴的な戦闘曲。
 分類的にはシンフォニック・ロックにあたるのだろうか。
・「Quantum Mechanics」
 唯一のエレクトリックバイオリンが使用されている曲。
 曲の長さとしても2分49秒もあり、曲自体の展開も多く、まさにElectric Asturiasらしい戦闘曲になっている。

「神獄塔 メアリスケルター」はゲームとしても楽しめましたが、
個人的には、主題歌を担当したイヤホンズ、楽曲を担当したZIZZ STUDIO、
大山曜さんが主宰しているプログレバンド「Asturias」を知ったことも大きな収穫でした。

メアリスケルター自体もまだ続編を作る余地が残っていますし、二重の意味で続編に期待をしています。

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※1 お色気要素に絡む部分はストーリー上は特に必須でない気はします(コンパイルハートだから仕方ない?)。
※2 リメイク版メアリスケルターだとナイトメアのパラメータが強化されているため、本当の意味で「虐殺鬼ごっこ」でした。
※3 オプションに「ウェイト」はありません。

最悪なる災厄人間に捧ぐの感想と紹介:世界を越えて人間の成長を描く物語

今回はケムコから2018年に発売されたADV、
『最悪なる災厄人間に捧ぐ』(通称さささぐ)についてご紹介します。

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詳しい部分は公式サイトで説明されているので省きますが、

とある出来事から生物に対する視覚と聴覚を失った主人公、豹馬
豹馬にしか見えない透明人間のヒロイン、クロ

この豹馬とクロが残酷な"災厄"に立ち向かう、
すごく、すごい、なんかとにかくすごい物語です。


まず、全てが伏線であり、物語が論理的に、自然に繋がっているのがすごい。
公式サイトにも「パラレルワールド」とありますが、この世界設定はなかなか複雑です。
ですが、伏線を綺麗に回収し、設定を活かしきり、物語は完結へ向かいます。

突飛な展開と感じたとしても、しっかりと理由付けがされているため、
読み進める度に「なるほど、こう繋がるのか…」が多発することになります。
伏線はどこにでも転がっているので、油断はできません(もう一周しても良いぐらい)。


次に、登場人物の内面の描き方がすごい。
30~40時間かけて豹馬とクロを掘り下げていくという時点で普通ではありませんが、
平行世界の数の分だけその内面が語られていきます。
物語中に登場する主なクロは5人(ふー、キナ、みー、なつ、にゅー)で、
表面的な性格はそれぞれ違いますが、根本的な性格は変わりません。

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※完全ではありませんがクロたちは同時に存在できます。

様々な視点から、豹馬とクロが過ごした時間を通して、その内面が語られていきます。

もちろん良い面から、悪い面まで。

この物語は怪奇(幻想)、純愛、青春など様々な要素を含んでいます。
あえて一言でまとめるなら、豹馬とクロの成長譚でしょう。
あまりにも残酷な世界の中で懸命に生きる豹馬とクロの姿には、心打たれるものがあります。

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※もちろん豹馬とクロの姿も変わります。


そして最後に、プレイヤーに対する問題提起がすごい。
ここばかりは人によりけりだと思いますが(全然合わなかった人もいるはず)、
プレイヤーが望む展開を理解したうえで、そこに否定や疑問符を投げつけていきます。
それぞれの登場人物の妥協のない掘り下げもあり、
「善悪」、「愛」、「幸福」、「正しさ」、答えの出ないそれらについて考えさせられます。

結末を迎え、「fin」の文字を目にした時は言葉を失いました。
BADエンドとは何か、TRUEエンドとは何かについても疑問を持ってしまい、
考えがまとまらないのに、気分は悪くなく、生きる気力が湧いてくる。
数年前にプレイした「素晴らしき日々」(※)とはまた違った方向で、衝撃的な物語でした。

 

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流血表現もあり、いじめ、自殺など陰鬱な出来事も絡んではきますが、
えぐい展開が苦手でないのであれば(得意な人なんてそうそういなさそうですが)、
是非手に取ってみてほしいゲームです。






この、何もない世界の中で、たった一人。
彼女だけが傍にいる。

これは、幸せだと思いますか?








追記:

(じゃあ、その、……)

(キナコソフトクリームでお願いします)

 

素晴らしき日々
2010年に発売されたR-18のノベルゲーム。
ウィトゲンシュタインという哲学者の「論理哲学論考」を中心に、
哲学や文学の要素が混ぜ込まれている。
こちらもいじめや自殺が絡んだ物語となっており、相当えげつない。

ロストスフィアの感想と紹介:昔ながらのRPGではない戦闘システム

2017年10月12日に発売された、Tokyo RPG Factory製作のRPG、『ロストスフィア』。
体験版の時点で世界観と戦闘システムに魅力を感じていたので、いずれは購入する予定でしたが、実際に製品版をプレイしたのは12月末になってのことでした。

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物に宿る記憶が抜け落ち、人や物が白い靄と化すロスト現象と、おとぎ話の中で語られる、世界を創ったとされる月。
パッケージの絵も含め、その独特な雰囲気は魅力的でした。

私はエンディングまで到達し、そこから隠しボスまで倒してしまいました。不満が無いわけではありませんが、十分遊べるRPGだったと思っています。
そして、どの部分に熱中したのかと言えば、ストーリーでもなく、グラフィックやBGMで表現される雰囲気でもなく、戦闘システムを含めたゲームシステムでした。


ストーリー面は可もなければ不可もない、といった感想です。
序盤から中盤はちょっと先行きが不安でしたが、ストーリーは後半になるほど良くなっていき、盛り上がっていきます。竜頭蛇尾の逆ですね。
エンディングも人を選びそうな内容ではありますが、演出も含めて私は好みです。

気になる部分はいくつかあります。
物語が後半に入るまでは敵味方含めてキャラが掘り下げられることが少なく、どうにも感情移入がしづらいように感じました。
サブイベントをこなしていくとキャラにも愛着が涌くのですが、そのイベントが解放されるのは最終盤なんですよね。
ラスボスや、味方以外のキャラもサブイベントで掘り下げられるので、クリア前に一通りのサブイベントを見たかどうかでストーリーの評価が変わるんじゃないかと。

物語の大筋は良く、伏線もしっかりと回収されています。
熱い展開や印象に残ったシーンもあるのですが、そのシーンへ持っていくための展開に無理を感じることはありました。
世界全体に影響を与える出来事が起きたはずなのに、村人にセリフが用意されていなかったりと、ちょっと残念な部分もあります。他の出来事に対しては反応するんですけどね…
この辺りは人によって感じ方が変わるはずです。
後述する演出のこともあり、物語は淡々と、ある意味ではテンポ良く展開していきます。

ロストスフィアでは、ムービーが無く、カメラがズームする事も少なく、キャラの感情はセリフと、3Dポリゴンでの身振り手振りで表現されます。

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見下ろし視点から変わることはありますし、リアルタイムレンダリングのような演出もありますが、演出は地味な方ではないでしょうか。
個人的には、このストーリーなら演出をもう少し派手にしても良かったように思えます。

グラフィックも悪いわけではありません。
ウユニ塩湖のような「うつしみの湖」は綺麗ですし、月が映る場所の画面は特に凝っています。ですが、どこかで見たことがある景色と言いますか、斬新さはあまり感じませんでした。

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とはいえ、風で砂や木の葉が飛んでいたり、特定のシーンで雨が降ったりと、ちょっとした演出はされています。

BGMは良く、物語を上手く演出していました。ゲームのサウンドトラックも既に購入しています。
メインテーマの旋律はアレンジされて様々なシーンで使われており、戦闘中のBGMにも使われています。そういうメインテーマの使い方は好みですし、個人的にはサガフロンティア2を思い出しました。
特に印象に残ったのは、フィールド曲の「Hope Journey」、港町で流れる「Great Bustle」、飛空艇のBGMである「Infinite route」でした。
戦闘曲だと、レアモンスターとの戦闘時の「A sign of fortune」や、特定のボス戦で使われる「Friendship」、ラスボス戦の「The end of myth」ですかね。
特にエンディング曲の「Light sphear」は、作曲者である三好智巳さんのBGMに対するこだわりが感じられます。
ロストスフィアでは、必ずピアノが楽曲に使われているのですが、私自身がピアノを趣味にしていることもあり、非常に好みです。


戦闘システムを説明すると長くなるので、先にゲームシステムについて触れます。戦闘システムもゲームシステムの一部ですし、戦闘とも多少関連しています。
欠かせないシステムとして、アーティファクトがあります。

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このアーティファクトは、戦闘だけではなく、ゲームシステムにも影響を与えています。
フィールドマップの表示、敵のHPとATBの表示といった基本的な効果だけではなく、戦闘後でのHP&MP&EN回復や、セーブポイントでの回復などの便利な機能も追加でき、更には経験値稼ぎや金稼ぎ用のモンスターの出現率まで調整できてしまいます。
まあ、金稼ぎ用のモンスターの出現率はそこまで低いわけでは無いようなので、序盤から中盤まで金欠に陥ることは無く、終盤ではむしろ余り始めてしまいましたが(装備強化に凝ろうとすると金は溶けます)。
話が逸れましたが、このアーティファクトは戦闘面にも作用します。
詳しくは後述しますが、戦闘の難易度が一気に変動するような、強力な効果が揃っています。

アーティファクトの作成には、「○○の記憶」というアイテムが必要になります。
記憶はフィールドマップでも拾えますが、数はたったの一個なので、モンスターからのドロップで集めていく事が基本になります。
モンスターごとに何の記憶をドロップするのかが決まっており、ドロップの内容は、月の記憶(図鑑)から確認する事ができます。

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アーティファクトの建造画面から逆引きで確認することもできるので、かなり便利でした。
また、このゲームにはドラゴンクエストシリーズでいうルーラは無く、船や飛空艇を使って記憶を集めに行く必要があります。
場合によってはダンジョンを抜けていく必要があるのですが、ダンジョンにはショートカットが用意されており、仕掛けさえ解いてしまえば後は楽に通り抜けられます(例外はあります)。
記憶はストーリーの進行で要求され、スキルを習得できるスキル法石の作成でも必要になるので、記憶を集めなければならない状況が度々発生します。
確かに面倒な部分ではあるのですが、記憶の逆引き、月の記憶の図鑑、ダンジョンのショートカットのおかげで、記憶集めは思った以上に快適でした。

他にも、料理というものもあり、次の戦闘中のみ能力を上昇させられるのですが、あまり利用はしませんでした。
料理ごとに食材が3つ指定されており、食材と料理代を渡すことで料理を受け取ることができます。
食材は基本的にフィールドマップのキラキラを調べて集める必要があるのですが、これがなかなか揃わないんですよね。

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見た目は美味しそうです。
料理の中で一番助かるのは、状態異常耐性を上げられる「大雨サケのムニエル」と「フルーツチューリップ」でしょうか。
防具で状態異常耐性をカバーするにも限界があるので、こういった料理を持っているといざという時に助かります。

戦闘面について話を進めます。
システムとしては、ファイナルファンタジーシリーズやクロノ・トリガーでお馴染みのATBシステムです。
加えて「機装」というロボットに乗ることができ、能力値が強化されるほか、パラダイムドライブという機装専用の技が使用可能になります。
RPGで言えば軌跡シリーズが近いと思うのですが、戦闘中に移動する事が可能で、場所取りによって攻撃に複数の敵を巻き込んだり、敵の攻撃を回避することもできます。

ロストスフィアは、厄介な行動を取るボスが多く、加えて回避率が高いボスもいるため、難易度は高めです。
ですが、意外とバランスは取れているように思えます。敵が強力な分、味方も強力なんですよね。
技封印、全体回復&攻撃、アイテムの全体化、更には敵の行動のキャンセルだったりと、仲間達のスキルの時点でかなり強力なのですが、機装時に使えるパラダイムドライブは更に強力です。

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ガルドラのパラダイムドライブは「神速」で、スキルを3つまで連続発動させることができ、特定の順番でスキルを発動させれば、追加で必殺技のようなものが入ります。
他に例を挙げれば、永続のスリップダメージを与える必中攻撃、12秒間完全無敵、HIT2回増加など、戦闘のバランスを変えてしまうような効果が揃っています。
パラダイムドライブの内容はスキル法石に対応して増えていくので、敵が強いと感じたらまずはスキル法石を揃えてみることが重要です。
戦闘中にキャラを入れ替える事もできますし、プレイヤーが取れる戦術の幅はかなり広くなっています。

前作の『いけにえと雪のセツナ』にもありましたが、こちらにも「刹那システム」というものがあります。
被ダメージや行動によってSP(MPではない)が溜まり、それを消費する事で刹那システムを利用する事ができるのですが、これも面白かったです。
このシステム自体は、スキルの使用時に特定のタイミングでボタンを押すと、そのスキルが強化されるというもので、大技を決める時に発動させると特に盛り上がります。
化内容はそのスキル法石に付けたセツナ法石によって変わり、純粋な威力強化から、状態異常付与、HPやSP回復まで様々です。
そして、刹那システムを発動させると、まれにセツナ法石の効果がスキル法石へと移ります。これを「昇華」と呼びます。
スキル法石自体に効果が加えられ、刹那システムを使わずとも効果が発揮されます。

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この場合だと、天属性強化と防御無視によって威力が強化され、更に味方全体のSPを回復することができます。
昇華を発生させるには刹那システムを使わなければならないのですが、敵のモンスターの背後を取って戦闘を開始すれば、味方全体のSPとATBが溜まった状態で戦闘が始まりますし、昇華を発生させる作業もストレス無く進められました。
背後から戦闘を開始し、先制を取ることさえ意識していれば、物語を進めているうちに自然と昇華が発生していくと思います。

最後に戦闘面でのアーティファクト効果です。
特定条件での威力上昇や能力上昇、移動距離によってSP獲得、刹那システム発動での敵のATB減少など、役に立つものが揃っています。中にはリスキーな効果を持つものもあります。
特に、必ず先制を取る効果や攻撃が必中になる効果は、戦闘の難易度を大きく左右するように思えます(ここまでばらして良かったのだろうか)。
気づくかどうかが非常に大事なので、こまめに確認する事をおすすめします。
セツナ法石とアーティファクトを体験版で体験できないのは本当に惜しかった…


私の場合は、自らに掛かった強化の数や行動回数の多さなどの、特定の条件によって威力が変動するスキルを使いこなすことに熱中してしまいました。

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状態異常などで阻止されることもあるのですが、組み立てた戦術が上手く決まった時のダメージの大きさは非常に爽快です。
物理でも魔法でも無い特殊攻撃や、ターンを消費しない限り維持され続けるバフも使いこなせると、更に戦術の幅が広がります。
雑魚戦以上にボス戦が楽しいゲームなので、もし今後のアップデートでボスラッシュなどが追加されたら再びプレイすることになりそうです。

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