鉛色の紙飛行機

ゲームについての感想など。

神獄塔メアリスケルター2の感想と紹介:独特なシステムと物語展開を持つ長編3DダンジョンRPG

今回は2018年7月12日にコンパイルハートから発売されたDRPG、
『神獄塔 メアリスケルター2』について紹介します。

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このゲームは前作にあたる『神獄塔 メアリスケルター』のリメイク版も同梱されており、ストーリー上も大きな関わりがあります。そのため、この記事では『神獄塔 メアリスケルター2』、リメイク版『神獄塔 メアリスケルター』(以降、メアリスケルター1)の両作品を取り扱います。

プレイ前は心配な部分もありましたが、結果としては良い作品でした。
ストーリーは伏線を含めて良く練られており、戦闘面も荒削りでありながらも色々なものを試す楽しみがありましたし、BGMは物語を良く演出していました。
特に『神獄塔 メアリスケルター2』からリメイク版『神獄塔 メアリスケルター』への橋渡しは秀逸だと思います。
人を選ぶ要素はありますが、世界観から細かいシステム面まで考えながらゲームをプレイする人には受けるのではないでしょうか。

舞台は現代日本、「ジェイル」という生物に寄生されたことで陥没し、周囲からも断絶した都市から物語は始まります。
この「ジェイル」の管理から抜け出し、地上へ脱出すること。
それがメアリスケルター1、2の物語の共通点となります。

世界観は良く作りこまれており、作中に疑問を持つような出来事があったとしても、しっかりと理由付けがされています。※1
序盤から伏線は張られており、それらの伏線は終盤に残さず回収されるため、物語としてよく出来ていると思います。

そもそも「ジェイル」という生き物とは何なのか、
「ジェイル」の外の世界は今どうなっているのか、
そして、常人離れした身体能力を持ち、童話の主人公と同じ名を持った「血式少女」はどうして存在するのか。
これらに限らず作中の謎は数多く存在し、物語においては「謎」が大きな推進力となっています。
公式サイトの「獄中童話前日譚」、「獄中童話幻日譚」をあえて読まずにプレイしてみるのも、一味違った面白さがあるかもしれません。

物語の順序としては、「メアリスケルター2」の次が「メアリスケルター1」となっており、物語として重点的に描かれる部分も1と2では異なっています。
「メアリスケルター2」では主に登場人物同士の会話を通じて内面を描き、
「メアリスケルター1」では主に世界の謎を解き明かしていきます。

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特に「メアリスケルター2」は「メアリスケルター1」を前提にした物語であるため、1では描かれなかった、あるいは描く必要のなかった、登場人物達の喜びから苦しみまでが全面に押し出されています。

2から1をプレイすることを考えれば登場人物の掘り下げは大きな意味を持ちますが、やはり「メアリスケルター2」単体としてみた場合は、コメディもあるものの物語は全体的に暗め、という評価になります。
また、謎が気になってストーリーを進めている人にとっては、中だるみと感じても仕方ないと思います。

その分、リメイク版「メアリスケルター1」は謎が解き明かされる高揚感と未来への希望を感じるストーリーとなっているので、『リメイク版「メアリスケルター1」まで含めての「メアリスケルター2」』、と思って遊んでみて欲しいというのが個人的な願いです。
確かに両作品を合わせると相当の分量になりますが、続編と前作のリメイクががこのような関係になっているゲームはそうそう無いので、どうか諦めずにプレイして欲しいです。

ちなみに、それぞれの主人公は、メアリスケルター2が女性主人公(つう)、メアリスケルター1は男性主人公(ジャック)であるため、会話イベントの毛色はだいぶ違っています。

次に、あまり他では触れられていないシステム面の感想に移ります。
穢れの管理、ジェイルボーナス(ルーレット)という斬新なシステムから、
バフ、デバフ、状態異常、職業変更等の基本的なシステムまで揃っているので、
戦闘は十分に楽しむことができました。

個人的には、穢れの管理とジェイルボーナスは戦闘をかなり面白くしていたと思っています。

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それぞれのキャラごとに血を浴びた量を表すゲージがあり、
このゲージが満たされると、ジェノサイドモードという強化状態になります。
ゲージが満たされる量は、弱点属性による攻撃、クリティカル攻撃、オーバーキルなどの条件で変動します。

ですが、このゲージには穢れという概念があり、大ダメージや時間経過で色が黒ずんでいきます。そして、穢れの度合いによってブラッドスケルター(つまりは暴走状態)になる確率が上がっていきます。

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場合によっては、そのまま全滅するため、ジャックの血を使って穢れを消す、または「舐める」コマンドでゲージを0にする等の対策が必要になります。

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ジェノサイドモード時にでしか利用できないスキルもあれば、「舐める」コマンドでのみ発動するスキル(魂血スキル)もあるため、ジェノサイドモードと魂血スキルのどちらを取るかは戦略によります。

次に、画面右上の3つのゲ―ジのどれかが満たされると、ジェイルボーナス(ルーレット)が始まります。
3つのゲ―ジというと何だか複雑ですが、とりあえず敵を出血させて、「舐める」コマンドを使用すればゲージは満たされていきます。

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発動条件が厳しい分、ジェイルボーナスの効果には強力なものが揃っており、
強力なバフ、デバフ、全体完全回復や耐性無視の状態異常などのボーナスを受けることができます。
また、それぞれの出現確率に関しては、ジェイルピースと呼ばれるアイテムを使って調節することが可能ですし、職業別スキルでジェイルボーナスを強化することも可能です。
ジェイルボーナスのバフとデバフが強力である引き換えに、通常のバフデバフの性能は抑え気味になっています。

ここまでは良かった面だけを紹介しましたが、調整が不安定な箇所があったことも確かです。
2の旧水族館エリア、リメイク版1の旧寺院エリアなど部分部分で敵の強さが極端になる箇所はありましたし、
後述する、2で独自に追加されたシステムに関しても、好みで言えばもう少しシンプルでも良かったと感じています。

メアリスケルター2にのみ存在するシステムについて、全てではありませんがいくつか紹介します。

・職業のパッシブスキルの引継ぎ
職業ごとに習得できるスキルのうち、パッシブスキルも引き継ぎが可能になっています。
そのため、AGIが低ければ最速行動のパッシブスキルで補ったりと、短所を埋め、長所を伸ばすことが可能です。
パッシブには有用なものが多いため、誰にどのスキルを引き継がせるか頭を悩ませる楽しみがありました。

・ブラッドファーム
「血晶」というアイテムをダンジョンに埋め、装備を栽培して収穫する農場です。
ランダムではありますが、補正値(+99まで)、付加効果付きの装備を手に入れることができます。
便利なシステムではあったのですが、その分、通常の武器強化のシステム(+20まで)が割を食っていたとも思います。

・装備の付加効果

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装備ごとに以下のような効果が追加されます。

鋭利属性→出血量の増加
殴打属性→クリティカル率上昇
血走属性→かごめかごめ発生率
装備スキル→後述

もちろん、どの装備にどの効果が付くのかはランダムなので、基本性能を取るか、付加効果を取るかで判断を迫られます。
アイコンの詳細な意味と効果の度合いが分からなかっため、それぞれの効果が具体的に可視化されていれば良かったと感じます。

・かごめかごめ
血走属性が付いた装備品を装備している状態で敵を攻撃すると、
まれに敵が後ろ向きになり、防御力が格段に下がります。
出来れば上手く利用したかったのですが、
発動には複雑な条件が絡んでいるようで、ほぼ発動せずにクリアしてしまいました。

・ユ血スキル

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特定のアイテムを使用し、消費SP0のスキルを習得することができます。
効果は補正値によって上昇していきます。
発売当初はかなり強力なスキルだったようですが、現在(2019/6/2)はかなり効果が抑えられており、そもそも補正値の強化も運任せであったため、あまり出番がありませんでした。
とはいえ、HP回復やSP回復のユ血スキルに関しては、回復効果強化のスキルや装備と組み合わせるとなかなかの効果を発揮します。

・装備スキル

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基本的には補正値のない、装備限定のユ血スキルのようなものです。
ユ血スキルと同様、ほぼ出番がありませんでしたが、消費なしの全体攻撃である「オールアタック」だけは恐ろしく使い勝手が良かったため、終盤まで使い続けていました。

・魔法の詠唱
全体攻撃や全体回復、また強力なスキルを使用する際には、詠唱として待ち時間が発生し、その間に攻撃を受けると確率で詠唱が中断されてしまいます。
結果として、全体魔法で先手を打つことが難しくなっています。
そのため、横一列魔法攻撃の「ブラッディマニューバ」や「SP・ファイアドレイン」の方が被弾を抑えるという意味では重宝しました。

上記のシステムはリメイク版のメアリスケルター1には引き継がれておらず、
同じDRPGでありながらもプレイした感覚には差がありました。
装備は、敵からのドロップ、マップ上のトレジャー、店売りで揃えることになりますし、通常の武器強化のシステム(血式兵器製造所)も上手く機能していました。
もちろん魔法の詠唱も無くなっていますが、その分行動を2回分消費するという仕組みに置き換わっています。

個人的には、リメイク版メアリスケルター1の方がなにかとシンプルで好みでした。
メアリスケルター2クリア後、立て続けにリメイク版メアリスケルター1をプレイできたのは、このあたりの理由が大きく関わっていたのではないかと思います。

DRPGとしてのダンジョン探索に目を向けると、アクション性のあるギミックが特徴的です。
時間で針が飛び出す床、綱渡り、時間制限ありの扉など、ダンジョン探索RPGとしては珍しいギミックが揃っています。

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そして、ひときわ特徴的なのが、強大な敵であるナイトメアとの「鬼ごっこ」です。
特定の条件を満たすまでは撃破不可であるため、とにかく追跡から逃れる必要があります。
追い詰められた場合は戦闘が開始され、敵が一時的に戦闘不能になるまでダメージを与え続けなければなりません。ターンではなく時間で追いかけてくるため、非常にスリルがあり楽しめました。※2
また、ナイトメアだけは時間で行動順が繰り上がる仕組みになっており、FFシリーズのATB同様に、素早いコマンド入力が求められます。※3

BGMの良さもこのゲームの魅力の一つです。
作曲は、ニトロプラス作品や、コンパイルハートの他のDRPGの楽曲を担当していたZIZZ STUDIOです。
1ループは短めなものの全体的に曲が凝っており、やはり主旋律をバイオリンで統一した戦闘曲が特徴的です。
特にメアリスケルター2に至っては戦闘曲が9曲もあり、相当のこだわりを感じられます。
以下、いくつか楽曲紹介。

メアリスケルター1
・「Soldier of the Wind」
 最初の通常戦闘曲。
 サビにあたる部分の疾走感が特徴で、このフレーズは2のとあるBGMにも使われている。
・「Skelter」
 戦闘曲ではなく、逆転が始まるシーンで良く使われるBGM。こちらも主旋律はバイオリン。
 1曲の長さが3分36秒もあり、長い会話の裏でも大抵はループせずに流れ続ける。
 作曲者の大山曜が主宰しているElectric Asturiasの3rdアルバム「Trinity」にセルフアレンジが収録されている。
・「精神の自由」
 解放地区(拠点)のBGM。
 こちらは曲の始まりのピアノが特徴的で、解放地区の平穏さと儚さが良く表現できていると感じる。

メアリスケルター2
・「Purple Flight」
 2の最初の通常戦闘曲。
 良い曲だが、個人的には水族館のザザスターの印象が残りすぎている。
・「美しき戦士たち」
 バイオリンの多重録音が特徴的な戦闘曲。
 分類的にはシンフォニック・ロックにあたるのだろうか。
・「Quantum Mechanics」
 唯一のエレクトリックバイオリンが使用されている曲。
 曲の長さとしても2分49秒もあり、曲自体の展開も多く、まさにElectric Asturiasらしい戦闘曲になっている。

「神獄塔 メアリスケルター」はゲームとしても楽しめましたが、
個人的には、主題歌を担当したイヤホンズ、楽曲を担当したZIZZ STUDIO、
大山曜さんが主宰しているプログレバンド「Asturias」を知ったことも大きな収穫でした。

メアリスケルター自体もまだ続編を作る余地が残っていますし、二重の意味で続編に期待をしています。

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※1 お色気要素に絡む部分はストーリー上は特に必須でない気はします(コンパイルハートだから仕方ない?)。
※2 リメイク版メアリスケルターだとナイトメアのパラメータが強化されているため、本当の意味で「虐殺鬼ごっこ」でした。
※3 オプションに「ウェイト」はありません。