鉛色の紙飛行機

ゲームについての感想など。

ロストスフィアの感想と紹介:昔ながらのRPGではない戦闘システム

2017年10月12日に発売された、Tokyo RPG Factory製作のRPG、『ロストスフィア』。
体験版の時点で世界観と戦闘システムに魅力を感じていたので、いずれは購入する予定でしたが、実際に製品版をプレイしたのは12月末になってのことでした。

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物に宿る記憶が抜け落ち、人や物が白い靄と化すロスト現象と、おとぎ話の中で語られる、世界を創ったとされる月。
パッケージの絵も含め、その独特な雰囲気は魅力的でした。

私はエンディングまで到達し、そこから隠しボスまで倒してしまいました。不満が無いわけではありませんが、十分遊べるRPGだったと思っています。
そして、どの部分に熱中したのかと言えば、ストーリーでもなく、グラフィックやBGMで表現される雰囲気でもなく、戦闘システムを含めたゲームシステムでした。


ストーリー面は可もなければ不可もない、といった感想です。
序盤から中盤はちょっと先行きが不安でしたが、ストーリーは後半になるほど良くなっていき、盛り上がっていきます。竜頭蛇尾の逆ですね。
エンディングも人を選びそうな内容ではありますが、演出も含めて私は好みです。

気になる部分はいくつかあります。
物語が後半に入るまでは敵味方含めてキャラが掘り下げられることが少なく、どうにも感情移入がしづらいように感じました。
サブイベントをこなしていくとキャラにも愛着が涌くのですが、そのイベントが解放されるのは最終盤なんですよね。
ラスボスや、味方以外のキャラもサブイベントで掘り下げられるので、クリア前に一通りのサブイベントを見たかどうかでストーリーの評価が変わるんじゃないかと。

物語の大筋は良く、伏線もしっかりと回収されています。
熱い展開や印象に残ったシーンもあるのですが、そのシーンへ持っていくための展開に無理を感じることはありました。
世界全体に影響を与える出来事が起きたはずなのに、村人にセリフが用意されていなかったりと、ちょっと残念な部分もあります。他の出来事に対しては反応するんですけどね…
この辺りは人によって感じ方が変わるはずです。
後述する演出のこともあり、物語は淡々と、ある意味ではテンポ良く展開していきます。

ロストスフィアでは、ムービーが無く、カメラがズームする事も少なく、キャラの感情はセリフと、3Dポリゴンでの身振り手振りで表現されます。

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見下ろし視点から変わることはありますし、リアルタイムレンダリングのような演出もありますが、演出は地味な方ではないでしょうか。
個人的には、このストーリーなら演出をもう少し派手にしても良かったように思えます。

グラフィックも悪いわけではありません。
ウユニ塩湖のような「うつしみの湖」は綺麗ですし、月が映る場所の画面は特に凝っています。ですが、どこかで見たことがある景色と言いますか、斬新さはあまり感じませんでした。

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とはいえ、風で砂や木の葉が飛んでいたり、特定のシーンで雨が降ったりと、ちょっとした演出はされています。

BGMは良く、物語を上手く演出していました。ゲームのサウンドトラックも既に購入しています。
メインテーマの旋律はアレンジされて様々なシーンで使われており、戦闘中のBGMにも使われています。そういうメインテーマの使い方は好みですし、個人的にはサガフロンティア2を思い出しました。
特に印象に残ったのは、フィールド曲の「Hope Journey」、港町で流れる「Great Bustle」、飛空艇のBGMである「Infinite route」でした。
戦闘曲だと、レアモンスターとの戦闘時の「A sign of fortune」や、特定のボス戦で使われる「Friendship」、ラスボス戦の「The end of myth」ですかね。
特にエンディング曲の「Light sphear」は、作曲者である三好智巳さんのBGMに対するこだわりが感じられます。
ロストスフィアでは、必ずピアノが楽曲に使われているのですが、私自身がピアノを趣味にしていることもあり、非常に好みです。


戦闘システムを説明すると長くなるので、先にゲームシステムについて触れます。戦闘システムもゲームシステムの一部ですし、戦闘とも多少関連しています。
欠かせないシステムとして、アーティファクトがあります。

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このアーティファクトは、戦闘だけではなく、ゲームシステムにも影響を与えています。
フィールドマップの表示、敵のHPとATBの表示といった基本的な効果だけではなく、戦闘後でのHP&MP&EN回復や、セーブポイントでの回復などの便利な機能も追加でき、更には経験値稼ぎや金稼ぎ用のモンスターの出現率まで調整できてしまいます。
まあ、金稼ぎ用のモンスターの出現率はそこまで低いわけでは無いようなので、序盤から中盤まで金欠に陥ることは無く、終盤ではむしろ余り始めてしまいましたが(装備強化に凝ろうとすると金は溶けます)。
話が逸れましたが、このアーティファクトは戦闘面にも作用します。
詳しくは後述しますが、戦闘の難易度が一気に変動するような、強力な効果が揃っています。

アーティファクトの作成には、「○○の記憶」というアイテムが必要になります。
記憶はフィールドマップでも拾えますが、数はたったの一個なので、モンスターからのドロップで集めていく事が基本になります。
モンスターごとに何の記憶をドロップするのかが決まっており、ドロップの内容は、月の記憶(図鑑)から確認する事ができます。

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アーティファクトの建造画面から逆引きで確認することもできるので、かなり便利でした。
また、このゲームにはドラゴンクエストシリーズでいうルーラは無く、船や飛空艇を使って記憶を集めに行く必要があります。
場合によってはダンジョンを抜けていく必要があるのですが、ダンジョンにはショートカットが用意されており、仕掛けさえ解いてしまえば後は楽に通り抜けられます(例外はあります)。
記憶はストーリーの進行で要求され、スキルを習得できるスキル法石の作成でも必要になるので、記憶を集めなければならない状況が度々発生します。
確かに面倒な部分ではあるのですが、記憶の逆引き、月の記憶の図鑑、ダンジョンのショートカットのおかげで、記憶集めは思った以上に快適でした。

他にも、料理というものもあり、次の戦闘中のみ能力を上昇させられるのですが、あまり利用はしませんでした。
料理ごとに食材が3つ指定されており、食材と料理代を渡すことで料理を受け取ることができます。
食材は基本的にフィールドマップのキラキラを調べて集める必要があるのですが、これがなかなか揃わないんですよね。

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見た目は美味しそうです。
料理の中で一番助かるのは、状態異常耐性を上げられる「大雨サケのムニエル」と「フルーツチューリップ」でしょうか。
防具で状態異常耐性をカバーするにも限界があるので、こういった料理を持っているといざという時に助かります。

戦闘面について話を進めます。
システムとしては、ファイナルファンタジーシリーズやクロノ・トリガーでお馴染みのATBシステムです。
加えて「機装」というロボットに乗ることができ、能力値が強化されるほか、パラダイムドライブという機装専用の技が使用可能になります。
RPGで言えば軌跡シリーズが近いと思うのですが、戦闘中に移動する事が可能で、場所取りによって攻撃に複数の敵を巻き込んだり、敵の攻撃を回避することもできます。

ロストスフィアは、厄介な行動を取るボスが多く、加えて回避率が高いボスもいるため、難易度は高めです。
ですが、意外とバランスは取れているように思えます。敵が強力な分、味方も強力なんですよね。
技封印、全体回復&攻撃、アイテムの全体化、更には敵の行動のキャンセルだったりと、仲間達のスキルの時点でかなり強力なのですが、機装時に使えるパラダイムドライブは更に強力です。

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ガルドラのパラダイムドライブは「神速」で、スキルを3つまで連続発動させることができ、特定の順番でスキルを発動させれば、追加で必殺技のようなものが入ります。
他に例を挙げれば、永続のスリップダメージを与える必中攻撃、12秒間完全無敵、HIT2回増加など、戦闘のバランスを変えてしまうような効果が揃っています。
パラダイムドライブの内容はスキル法石に対応して増えていくので、敵が強いと感じたらまずはスキル法石を揃えてみることが重要です。
戦闘中にキャラを入れ替える事もできますし、プレイヤーが取れる戦術の幅はかなり広くなっています。

前作の『いけにえと雪のセツナ』にもありましたが、こちらにも「刹那システム」というものがあります。
被ダメージや行動によってSP(MPではない)が溜まり、それを消費する事で刹那システムを利用する事ができるのですが、これも面白かったです。
このシステム自体は、スキルの使用時に特定のタイミングでボタンを押すと、そのスキルが強化されるというもので、大技を決める時に発動させると特に盛り上がります。
化内容はそのスキル法石に付けたセツナ法石によって変わり、純粋な威力強化から、状態異常付与、HPやSP回復まで様々です。
そして、刹那システムを発動させると、まれにセツナ法石の効果がスキル法石へと移ります。これを「昇華」と呼びます。
スキル法石自体に効果が加えられ、刹那システムを使わずとも効果が発揮されます。

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この場合だと、天属性強化と防御無視によって威力が強化され、更に味方全体のSPを回復することができます。
昇華を発生させるには刹那システムを使わなければならないのですが、敵のモンスターの背後を取って戦闘を開始すれば、味方全体のSPとATBが溜まった状態で戦闘が始まりますし、昇華を発生させる作業もストレス無く進められました。
背後から戦闘を開始し、先制を取ることさえ意識していれば、物語を進めているうちに自然と昇華が発生していくと思います。

最後に戦闘面でのアーティファクト効果です。
特定条件での威力上昇や能力上昇、移動距離によってSP獲得、刹那システム発動での敵のATB減少など、役に立つものが揃っています。中にはリスキーな効果を持つものもあります。
特に、必ず先制を取る効果や攻撃が必中になる効果は、戦闘の難易度を大きく左右するように思えます(ここまでばらして良かったのだろうか)。
気づくかどうかが非常に大事なので、こまめに確認する事をおすすめします。
セツナ法石とアーティファクトを体験版で体験できないのは本当に惜しかった…


私の場合は、自らに掛かった強化の数や行動回数の多さなどの、特定の条件によって威力が変動するスキルを使いこなすことに熱中してしまいました。

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状態異常などで阻止されることもあるのですが、組み立てた戦術が上手く決まった時のダメージの大きさは非常に爽快です。
物理でも魔法でも無い特殊攻撃や、ターンを消費しない限り維持され続けるバフも使いこなせると、更に戦術の幅が広がります。
雑魚戦以上にボス戦が楽しいゲームなので、もし今後のアップデートでボスラッシュなどが追加されたら再びプレイすることになりそうです。

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